


私はこの学校を立ち上げた理由を問われたとき、こう答えました。「人にとって最も大切なのは誇りです。自信がないことは、人間としてとてもつらいことです。」
ムンド校は、南米の子どもたちに母国語と日本語両輪で教えるための学校だけでなく、子どの尊厳と誇りを守るための学校です。
現在、日本には多くのブラジルやペルーにルーツを持つ子どもたちが暮らしています。しかし、日本の教育制度は、基本的に単一言語を前提に設計されています。日本語が十分にできない子どもは、「能力が低い」と誤解されやすい。ですが実際には、思考力がないのではなく、表現する言語が整っていないだけなのです。
母語で培われた思考力は第二言語に移転する、と言われています。つまり、母語が土台になるのです。母語は単なる言語ではありません。それは、家族との記憶であり、祖父母との会話であり、自分の過去そのものです。
もし子どもが「その言葉はいらない」「日本語だけできればいい」と無意識にでも感じとったとしたらどうなるでしょうか。それは言語を失うことではなく、自分の一部を否定されることです。アイデンティティが揺らいだ子どもは、自信を失います。自信を失った子どもは、学ぶ力を発揮できません。私たちが守ろうとしているのは、語学ではなく、子どもの「根」です。
ムンド校では、母語を根として大切に育てながら、日本語という翼を伸ばします。根がなければ、翼は折れます。しかし、根がしっかりしていれば、翼は高く広がります。ムンド校が掲げている「ダブルアドバンテージ(二つの言語に支えられる)」は、未来の社会にとっての資産です。二つの言語と文化を橋渡しできる人材は、日本社会にとっても大きな財産です。
ムンド校は、その「土台」を育てています。
ムンド校の教育は、単なる支援活動ではなく、社会の未来を支える教育の一形態です。